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コラム

改正民法の解説① 消滅時効に関する改正

はじめに

 平成29年(2017年)6月2日に公布された改正民法が令和2年(2020年)4月1日から施行されます。

 改正を受けた条文数が257ヵ条,新設された条文数は85ヵ条にも及びますが,ほとんどは軽微な表現の変更か,最高裁判所の判例の内容を明文化したもので,今後の実務に影響を与えるようなものは限られています。

 コラムでは,法務省民事局が重要な実質改正事項として挙げている内容のうち,以下の事項に絞って解説します。

 

①消滅時効に関する見直し

②法定利率に関する見直し

③保証に関する見直し

債権の消滅時効期間の統一化

 改正民法では,以下の通り,短期消滅時効や商事債権の時効制度が廃止され,消滅時効の期間が統一化されます。

 また,「権利を行使できることを知ったときから5年(新法166条1項1号)」という新しい消滅時効期間が導入されます。

新旧対照表

改正前 改正後

原則

権利を行使できるときから10年(旧法167条1項)

原則

権利を行使できることを知ったときから5年(新法166条1項1号)

②権利を行使できる時から10年(新法166条1項2号)

短期消滅時効

5年
  • 定期給付債権(家賃,年金など)旧法169条
3年
  • 医師,助産師又は薬剤師の診療,助産又は調剤に関する債権:診療費,調剤費など(旧法170条1号)
  • 工事の設計,施工又は監理を業とする者の工事に関する債権:工事の請負代金など(旧法170条2号)
  • 弁護士又は弁護士法人,公証人に預けた書類の返還請求権(旧法171条)
2年
  • 弁護士,弁護士法人又は公証人の職務に関する債権:弁護士費用など(旧法172条1項)
  • 生産者,卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価(売買代金)に係る債権(旧法173条1号)
  • 自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権:理髪店の代金など(旧法173条2号)
  • 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育,衣食又は寄宿の代価について有する債権:授業料,教材費など(旧法173条3号)
1年
  • 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権:サラリーマンの給料など(旧法174条1号)(注)
  • 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権:歌手の出演料など(旧法174条2号)(注)
  • 運送賃に係る債権:宅配便代,タクシーの運賃など(旧法174条3号)
  • 旅館,料理店,飲食店,貸席又は娯楽場の宿泊料,飲食料,席料,入場料,消費物の代価又は立替金に係る債権:ホテルの宿泊代,飲み屋のツケなど(旧法174条4号)
  • 動産の損料に係る債権:レンタカー代などの極めて短期間の動産の賃貸借の賃料(旧法174条5号)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃止

商事債権

権利を行使できるときから5年(商法522条)

(注)労働基準法が適用される事例の場合,特別法である労働基準法115条で消滅時効が2年と規定されているため,改正民法166条の適用はありません。

経過措置

 債権の消滅時効期間の改正に関する新旧規定の適用関係は以下の通りとなります。

新旧規定の適用関係

  適用される法
施行日以前に債権が生じた場合(原因となる法律行為が施行日前にされた場合を含む) 旧法
施行日以後に債権が生じた場合 新法

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効,時効の完成猶予制度

 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の改正及び時効の完成猶予制度の導入については,交通事故専門サイト コラム「改正民法の解説② 時効制度の改正」で解説していますので,そちらをご覧下さい。

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