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コラム

改正民法の解説② 法定利率に関する改正

 平成29年(2017年)6月2日に公布された改正民法が令和2年(2020年)4月1日から施行され,法定利率が見直されます。

法定利率の見直し

当面の法定利率の引き下げ

 改正民法では年5%の固定の法定利率が廃止されて3年毎に見直される変動制が導入されます。当面の法定利率については,旧法から2%引き下げられた3%となります。

 また,商法514条は,商行為によって生じた債権について年6%の商事法定利率を定めていましたが,改正民法の施行にあわせて同法は削除され,商取引についての法定利率も民法と同一になりました。

 旧法の法定利率は明治期からずっと見直しがされておらず,市中金利との乖離がある不合理な状況が続いていました。改正法は,この不合理な状況を是正し,法定利率を市中の金利の水準にあわせることを目的としています。

実務上の影響

 旧法の法定利率が市中金利を大きく上回っていたことにより,利息や遅延損害金の額が高額となる一方で,中間利息の控除の場面では不当に賠償額が抑えられている状況が生じていました。

 改正法施行により,不法行為における逸失利益の算定において,5%ではなく3%(但し,3年毎に見直されます)で中間利息が控除されることになりますが,中間利息控除の利率が違えば金額的にも相当変わってきます。

 中間利息控除については,特に交通事故の損害賠償実務に大きな影響があると考えられます。

 後遺障害逸失利益を算定する場面を想定してみましょう。

 例えば,基礎収入400万円、労働能力喪失率20%、労働能力喪失期間20年をもとに算定すると,労働能力喪失期間20年に対応する年利5%のライプニッツ係数がおよそ12.4622ですので,旧法における後遺障害逸失利益は「4,000,000×0.2×12.4622=9,969,760(円)」になります。

 一方,労働能力喪失期間20年に対応する年利3%のライプニッツ係数がおよそ14.8774ですので,改正法における後遺障害逸失利益は「4,000,000×0.2×14.8774=11,901,920(円)」となります。

 この事例では,法定利率が2%下がったことで後遺障害逸失利益が1,932,160円増えています。

参考

たかつき法律事務所交通事故専門サイト

コラム「改正民法の解説① 法定利率の変更

経過措置

 法定利率の改正に関する新旧規定の適用関係は以下の通りとなります。

新旧規定の適用関係

  適用される法
  • 施行日以前に債権が生じた場合
  • 施行日以前に金銭債務の遅滞が生じた場合
  • 不法行為日(事故日等)が施行日以前の場合(中間利息控除の基準日も同じ)
旧法
  • 施行日以後に債権が生じた場合
  • 施行日以後に金銭債務の遅滞が生じた場合
  • 不法行為日(事故日等)が施行日後の場合(中間利息控除の基準日も同じ)
新法

 

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