財産分与の対象となる夫婦協同財産は、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(債務)の両方を含みます。この場合、プラスの財産からマイナスの財産を引いた残額が基準になります。
プラスの財産としては、預金、現金、不動産、有価証券(株式)、動産(車や絵画等)、保険の解約返戻金、退職金(婚姻から別居まで)等があります。なお、預金は、別居時の残高が基準になります。
マイナスの財産とは、結婚後に夫婦の生活費としての借金などです。具体的には、住宅ローンやマイカーローン、消費者金融からの借入も含みます。
夫婦で保有している不動産は、通常、時価で算定します。実務上は、夫婦の双方が算定した額の平均値を用いるのが一般的です。
夫婦が別居した時点で株式を保有していた場合、別居時の株式で判断するのが通例ですが、売却した場合には、売却額で評価します。
夫婦のどちらかが加入している生命保険や学資保険は財産分与の対象になります。保険会社が算出した解約返戻金の見積もり金額をもとに財産分与の額を算定します。なお、解約返戻金は、別居した時点を基準に評価します。
実務上、退職金も財産分与の対象となると考えられています。財産分与の対象となる退職金は、結婚してから別居するまでの期間に限られ、別居時に自己都合で退職した場合の退職金相当金を試算して算定します。但し、退職日が間近な場合には定年退職時の退職金から別居後の労働分を差し引いて中間利息を控除して算定するとする裁判例があります。この計算は複雑になりがちなので、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
会社と配偶者は別ものなので、原則、会社資産は財産分与の対象になりません。但し、会社の株式は財産分与の対象になります。この場合の請求は複雑になるので、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
子どもの名義の預金が財産分与の対象になるか否かは、その預金の性質によって異なります。夫婦の収入を、単に子ども名義の口座に積み立てていたような場合には、財産分与の対象となり得ます。但し、教育費や結婚資金など、子どものために使う意図で預金されたいた場合は、親から子どもに贈与されたものとして、財産分与の対象とならない場合もあります。同様に、出産祝いや入学祝等は、第三者から子どもに贈与されたものとして、子ども名義の預金は夫婦の財産分与の対象にはなりません。
なお、協議で財産分与を決める場合には、上記の具体例に関係なく、婚姻中に夫婦の協力で形成・維持された財産について、自由に決めることができます。
財産分与は、結婚後に夫婦が築いてきた財産を分けることを言うので、結婚前に配偶者のそれぞれが保有していた財産、結婚中に相続した財産は財産分与の対象になりません。