執行猶予とは、有罪でもすぐに刑罰を受けさせず、一定期間無事に過ごせば最終的に刑務所に行かなくてもよいとする制度です。
有罪ではあるが直ちに刑務所に入るのは重すぎる場合に、次に犯罪等を行ったら刑務所に入ることになるという心理的圧力を与えつつ、社会生活の機会を与え反省を促すことが目的です。
執行猶予期間中、何事もなく終了したら、その時から今回の事件で刑務所に行く必要はありません。しかし猶予期間中に再び悪いことをして裁判を受ける場合は、執行猶予が取り消され、新しく言い渡される刑と、前に言い渡された刑を合わせて受刑することになります。
執行猶予にしてもらうためには、法律でいくつかの要件が定められています。
具体的には、①今回の事件の判決が3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金刑であること、②禁錮以上の刑に処された前科がないこと、あるいは、禁錮以上の刑に処されたことがあっても刑の執行が終了してから5年間他の刑を受けていないこと、が必要です。
法律上は罰金刑も執行猶予の対象ですが、実際には罰金刑で執行猶予となることはほぼありません。
しかし、この要件を満たせば、必ず執行猶予が付くというわけではなく、担当する裁判官が、事件の重大性や反省の度合いや被害者対応、社会の中で更生ができるような環境が整っているか等、様々な要素を考慮して決定します。そこで、執行猶予付き判決を得るためには、刑事事件の経験豊富な弁護士に相談してしっかり対策を練ることが必要です。
執行猶予付きの判決が得られた場合、その場で釈放されて帰宅できます。
執行猶予の期間中は、基本的には、通常の日常生活を送ることができます。公務員等、法律上の制限がある職業を除いては自由に仕事ができますし、会社の取締役の人は、執行猶予つきの判決が得られれば、法律上は引き続き取締役の職務を遂行することができます。
会社法331条(取締役の資格等)
1項 次に掲げる者は、取締役となることができない。
4号 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
また、引っ越し、結婚、進学なども自由ですし、海外旅行も、渡航国のビザ取得などの問題がなければ、特に制限はありません。