逮捕とは,捜査機関が被疑者(テレビ報道では「容疑者」と呼ばれています)を捕まえ身体を拘束することをいいます。
逮捕には,通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕という3つの種類があり,逮捕されると,通常は手錠をかけられ,警察署の留置場に入れられることになります。
警察署では弁護士を選任することができることを告げられ,言い分を聞かれます。
身柄を拘束する必要がないと判断されると釈放されますが,警察の判断で釈放されない場合は,逮捕から48時間以内に検察庁に送致されます。
検察庁では,検察官に言い分を聞かれ,引き続いて身柄を拘束する手続きの請求をするかどうかの判断が行われます。
拘束の必要なしと判断されると釈放されますが,逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると,検察官は裁判官に対して引続き身柄を拘束する手続きをを取るよう求めます(勾留請求)。
裁判官は,検察官の申し出をうけて被疑者の言い分の聞き取りを行います(勾留質問)。
逃亡や罪証隠滅のおそれがないと判断されると釈放されますが,身柄を拘束すべきだと判断されると,引き続き10日間身柄が拘束されます(勾留)。
逮捕に引き続いて行われる比較的長期間の身体拘束を被疑者勾留といいます。
建前上は,勾留の理由(住居がない場合,証拠隠滅のおそれがある場合,逃亡の可能性がある場合)だけでなく,被疑者の生活を犠牲にしても,なお勾留する必要がある場合に限って勾留できるとされています。
もっとも,現在の刑事手続の実情では,検察官が勾留請求を行うと,裁判官はほぼ100%勾留を認めているのが現実です。
最初の勾留期間は,検察官が勾留を請求した日から10日間です。
しかし,複雑な事件等でやむを得ない理由で捜査を終えることができない場合は,10日間の勾留のあと,さらに最大10日間の勾留期間の延長を請求することができます。
万引の自白事件などの簡易な事件や被疑者段階で示談が成立した事件等を除くと,勾留期間の延長が請求されることも少なくありません。
勾留期間満了までに(通常は最終日に),検察官は被疑者について,不起訴,起訴,処分保留釈放のいずれかの処分を行います。
不起訴については,嫌疑不十分による不起訴の場合もあれば,検察官が有罪に足る証拠があると考えているけれども刑事罰を課すほどではないとして猶予する起訴猶予処分の場合もあります。起訴猶予処分の場合,前科はつきませんが,前歴がつくことになります。
起訴についても,正式な裁判手続きへ移行する公判請求と,法定刑で罰金がある場合に罰金の納付と引き換えに釈放される略式請求の2通りがあります。略式請求による罰金の場合であっても,前科となります。
処分保留釈放は,勾留期間中に起訴か不起訴かの材料が揃わなかっただけですので,身柄は解放されるものの,在宅で捜査が進み,後日公判請求手続きや略式請求手続きが取られることがあります。
公判請求された場合,多くのケースでは第1回公判期日後まで留置所で引き続き身柄が拘束されています。
第1回公判期日前に拘置所へ移送されることもありますが,移送について決まったルールはなく,拘置所の空き状況等にも左右されるようです。
公判請求後については,保釈請求をすることができます。保釈が認められれば身柄が解放され,在宅で裁判を受けることになります。