コラム
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平成30年(2018年)7月13日に公布された改正民法の相続法部分のうち,相続の効力に関する改正部分が令和1年(2019年)7月1日に施行されます。
最高裁判所は,「相続させる」旨の遺言について登記なくして第三者に対抗できるとの判断を示していました。
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は,特段の事情のない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集454号477頁参照)。このように,「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁,最高裁平成元年(オ)第714号同5年7月19日第二小法廷判決・裁判集民事169号243頁参照)。したがって,本件において,被上告人は,本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を,登記なくして上告人らに対抗することができる。
そのため,法定相続人に対して,遺言に「~を遺贈する」と記載する場合と,「~を相続させる」と記載する場合とで,取扱いが異なっていました。
被相続人甲さんに,相続人として子の乙さんと丙さんがいた場合を想定してみましょう。
甲さんは,遺言での所有していた土地を乙さんに「相続させる」旨の遺言を作成していましたが,丙さんは,当該土地について法定相続分である1/2の持分を第三者の丁さんへ売却し,丁さんは所有権移転登記を備えてしまいました。
ここで,乙さんが遺言の内容どおりに,土地全部の所有権を丁さんに主張できるかが問題となります。
このような場合,法定相続人に対して不動産を「遺贈する」と遺言で記載した場合には,対抗要件(登記)を具備しなければ善意の第三者に対抗できない一方,「相続させる」と記載した場合には,対抗要件を具備することなく,善意の第三者に対応することができました。
つまり,現行法の下では,乙さんは,登記などの対抗要件を先に備えることなく,登記を移転した丁さんに土地全部の所有権に対抗することができました。
一方,改正法では,上記のような様式に関係なく,遺言に「相続させる」と記載する場合も,対抗要件(登記など)の具備が必要になります。
したがって,上記事例が改正法施行後に開始された相続だった場合,登記を先に備えた丁さんに乙さんは対抗できず,土地の1/2の持分については所有権を得ることができないということになります。
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